東京都八王子市立由井第三小学校
主幹教諭 八木美香
手の届かない域、心通わせきれない域……どうしたらよいのか。今年度考えてしまうことが多々ありました。子ども同士だから言い合えること、子ども同士だから察し合えることの領域が以前と変化してきていると感じます。
例えば、以前の記事にも書きましたが、私は家庭学習の取り組みを充実させることで、「自分で考える力」から始まり、その発展として、自分で考えて行動したことを「客観的に振り返る力」が育ち、そこに充実感を味わい「再び自分で考える」という循環が生まれると考えています。すると、さらなる発展として、「友だちはどう考えるのかな?」と他を知りたくなる「協働的な学習」へとつながっていきます。これらが日常の学習の充実を支えています。
まずは、「家庭学習」を充実させるために以前の記事に載せたような工夫をしています。その一つが「班で提出する」です。
子ども同士だから言える
「出してよ。集まらないと出せないじゃない!」「え! 今日もないの? だったら、自分から先生に報告してきなよ」。大人の世界だと、ここまで言いにくいなと思ってしまうことも言い合える仲間。「そうか。みんなも頑張っているから自分も頑張ろう」という姿勢や大人としての振る舞いを身につけながら、家庭学習の取り組みが習慣となっていきました。
子ども同士だから察し合える
「お! 順調だね」。なかなか定着できなかった子が習慣付いてきた姿を友だち目線で褒めてくれる仲間。担任よりもタイミングよく褒めてくれる友だちの存在が家庭学習の取り組みを支えてくれました。担任が手の届かない域、心通わせきれない域を友だち同士で支え合ってくれていました。
これらは、高学年の子どもたちにとって繊細な域でもあり、微妙なバランスが必要な部分だと感じていました。今の世の中、SNSが発達して子どもの生活の中に入り込んできています。短い言葉でのやりとり、個々のやりとり、グループでのやりとりなど便利ですが、短すぎて伝えきれないことがあったり、伝えられたことの影に隠れている心配事が出てきたりしています。
「あの話し合いの時のあの発言。面白かったね」。この「面白かった」が「興味深かった」のか「ちょっと妙な感じだった」のかが捉えきれないと感じ、受け取る側に不安が生まれます。さらに、「こんなところでこんなことが話題になるのか!」、あるいは「こんなにたくさんの人に知られることになるのか!」「個々でのやりとりで他に知られないはずが!」と、グループから抜けていったり、解体されたり、編成替えされたり、大人ではなかなか行われないことが、SNSを介して次々と起こります。
これらのことも担任の目の前で起きて、子どもと一緒に確認できているわけではありません。担任に相談することすらはばかる子どもいます。そんな中で察することができた状況です。しかし、目の前の子どもたちの変化を感じます。
家庭学習の提出時に…子ども同士だから言えない、子ども同士だから察し過ぎてしまう
「ひどいことを言っちゃってないかな」「SNSで言われちゃう」「出せないのかな?」「やってきてないのかな?」「提出箱に入れられないな。先に入れちゃうと何か言われちゃう」(いつまでも提出されないで寂しげに置きっぱなしになっている提出箱)。
以前の記事にも書いた通り、悩みを打ち明けてくる子どもの話をじっくり聞いてあげるだけでなく、子ども一人ひとりから発せられる思い(言葉だけでなく、表情や作品からも発せられていると信じています)を受信しようと努力の毎日です。「学級を学習集団としてまとめ上げ、子ども一人ひとりを見取り……」ということの難しさに直面しています。
3学期も初日に日めくりカレンダーの作成をしながら、子ども一人ひとりから学校生活への思い、6年生として卒業へ向けての思いを引き出し、その一つ一つを子どもたちと日々めくりながら一枚一枚掲示しながら互いを大切にできる心を育てていきたいと思います。
つづく
東京都八王子市立由井第三小学校
主幹教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。