東京都八王子市立由井第三小学校
主幹教諭 八木美香
生活科や総合的な学習の時間に不可欠といっても過言でない存在がゲストティーチャーです。
過去に実践してきた単元を振り返ってみると、子どもが本気になって活動した姿には、「ゲストティーチャーあり!」でした。本ブログをお読みいただいている方は、生活科や総合的な学習の時間の授業づくりに興味がある、もしくは、よい単元を開発しようと挑戦中であることが予想されますので、「その通り!」と思われるかもしれません。
私は、ただいま行っている実践(単元づくり)で、ゲストティーチャーのことについて整理し、発信する機会を得ましたので、今回のテーマとしました。
現在、6年生を担任しています。校長からは「総合的な学習の時間の単元で、6年生の単元として本校の総合的な学習の全体計画に添いつつ、恒久的で持続可能な単元を開発するように」という命を受けていました。
6年生は、キャリア教育的な活動が計画されています。これまでは「様々な大人と出会い、その方との関わりを通して、その方の職業や生き方について知り、自分なりの大人像を描く」という趣旨で活動が行われていました。
この「様々な大人と出会う」ことをセッティングするのが、授業者の教材研究(=ゲストティーチャー探し)にあたります。学区域のことをよく知る担任、地域との関わりが深い担任、人とのコミュニケーションをとることが得意な担任ならば、あっという間に何人もゲストティーチャーを探し出して、日程を調整して……と準備が進み、単元が熱をもって展開していったかもしれません。しかし、異動してきたばかりの担任や校務多忙中の担任などでは、準備もままならず、「お仕事(=将来就きたい仕事)について、知り合いにインタビューしたり、インターネットで調べたり」という展開になることもあります。
「恒久的で持続可能な」というお題を受け、これまでの単元づくり(教材研究、準備)で、何が問題なのかを考えました。
- 複数のゲストティーチャーを探すこと
- 同日または同時期に複数回、出会いの場を設けるために調整すること
これらが問題になっているとして、これに替わるものを考えました。
1人1台端末を日常的に使用するようになっている現在。私の勤務する自治体ではChromebookを使っています。それらのChromebookには、カメラ機能が付いています。
「カメラ? 写真? 写真屋さん? カメラマンさん? 卒業アルバム?」。学年の先生とどうしようかと悩んでいる中で、ひらめきました。1人1台カメラを持っている! 卒業アルバム作成のために6年生のところによくいらしている写真館のカメラマンさんがいる! この方をゲストティーチャーとして、単元の活動を深めていこう!
まず、1学期のテーマは、『写真のプロになろう』です。活動の時の約束は「肖像権の関係から人(体の一部を含めて)を撮らないこと」だけです。子どもたちは、自分の端末のカメラでたくさんの写真を撮りました。学校の敷地内のあらゆるところ、そのときに出会った動植物、さらには、端末を持ち帰った時に撮った地域の神社、畑、自然、動植物など、たくさんの写真が集まってきました。
続く2学期のテーマは『プロから学ぼう』です。卒業アルバムの撮影で来校していたカメラマンさんが、子どもたちが撮った写真を見てくれるという場を設定しました。
写真館には、プロのカメラマンさんが複数人所属しています。写真館の社長さんとじっくり打ち合わせをして、3人のカメラマンさんが複数回(今年度は4回)、来校してくださることになりました。子どもたちは、カメラマンさんからのアドバイスで自分の写真がどんどん素敵になっていくことを実感し、Chromebookを持って、あちこちで写真を撮ることに熱中しました。同時に、カメラマンさんの人柄にも触れて、「撮り方を詳しく教えてくれる熱心な人」「『もっとよくするにはね……』と面倒見がよい人」「名前を覚えて話しかけてくれる人」など素敵な大人像にも触れていきました。
残る3学期には、テーマを『素敵な大人』に進化させ、カメラマンさんだけでなく、昨年度の総合でお世話になった方、5、6年生の宿泊行事でお世話になった看護師の先生など、共通の知人である大人一人ひとりに再度触れ合い、素敵な大人像を広げていく予定です。
これまでは、さまざまな仕事に就いている人を複数人、ゲストティーチャーに迎えていましたが、今回は、子どもが写真に興味をもったところで、対象を「カメラマンさん」に絞り、さらに、子どもたちが直接触れ合う機会を増やすために複数のカメラマンさんにご協力いただくこととしました。
さらに、「恒久的に持続可能」とするために、写真館にお願いして、毎年の総合的な学習のゲストティーチャーになっていただくことが叶いました。6年生の担任は、卒業アルバムの仕事で来校する機会が多くなる写真館の方から「今年度は、どうしますか? いつから始めますか?」「昨年度は、こんなふうにやりましたよ」などと声を掛けていただけることで、安心して単元をスタートさせたり、ゲストティーチャーや前年度の6年生の担任と情報交換したりすることができます。
一見、“他人任せ”のような気もしますが、教員が校務多忙な折に、「準備しなくては……」「どうしよう……」と悩むことがなくなり、授業に注力できることで、子どもにとっても夢中になれる活動が保証され、みんなが幸せになれます。
数年前までは、1人1台端末など考えられないことでした。1人1台カメラも同じことでした。全体計画は、指導要領の改訂や学校全体の数年ごとの見直しなどで変化はするものの、一度作成した単元はなかなか変化しません。子どもの取り巻く環境、学校を運営する立場からの課題などに気を配り、子どもの興味関心、担任の単元運営が恒久的で持続可能であることを念頭に置いて、変更、改善が必要なのだということを実感した今年度の単元開発でした。
つづく
東京都八王子市立由井第三小学校
主幹教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。