東京都八王子市立由井第三小学校
主任教諭 八木美香
先日、本校の校長が職員に「『学級びらき』と同じくらいに丁寧に行う必要があるのが『学級じまい』である」という話をしました。その話を聞いて、この仕事を数十年やっている私の学級じまいの具体は何かと考え、整理してみました。
私の学級の子どもたちが、朝の会でさわやかな挨拶「おはようございます!」を響かせることができるのがあと数回。「カウントダウンカレンダー」が学年の終わりが近いことを告げています。
手づくりの「カウントダウンカレンダー」
3学期初日に「先生からのお年玉!」「あれ? 先生、ただの紙だよ!」というやりとりをしながら、子どもたちに日付の入った紙を配付しました。一人が2、3枚を担当して、絵やコメントをかき込み「カウントダウンカレンダー」をつくっていきます。
子どもたちは、「これをめくるときに『あと◯日』って思うんだろうねぇ」「『思い残すことなし!』って励ましのコメントを書いちゃおうかな」「『あと◯日! 思いきり楽しもう!』にしよう」と言いながら、担当した紙にコメントを書き始めました。
教室では毎日、日直がこの日めくりカレンダーをめくり、コメントを読み上げるのが日課になりました。担任としては「学級じまい」は、この時から始めています。この仲間とこの教室で過ごすのはあと何日と数えながら、それまでの充実した活動を思い起こしたり、自分の成長を実感したりする日々をつくっていきます。
総合で取り組んできた活動を振り返り、この活動を通して「こんな力がついた」「こんな思いをした」「こんな願いをもつようになった」「こんなことを考えられるようになった」「来年の5年生に託したい」という話にもなります。このような成長を振り返る話し合いを重ねました。
総合に限らず、1年間を振り返る活動も行いました。「楽しかった」「またやりたい」という言葉では語り尽くせず、より適した言葉を探し始める姿が見られたら、「学級じまい」が佳境に入ります。
思い出の品物を全員でわける「年度末オークション」
終業式まで残り10日を切り、カレンダーが一桁になった日に、子どもたちは壁に貼ってあるゲストティーチャーさんの写真を指しながら「このゲストティーチャーさんの写真、どうするの? 記念にもらいたいな。じゃんけん大会しようか」と話していました。この頃から教室内の掲示物を名残惜しそうに見つめるようになりました。
そこで担任の私は、大きな箱を探してきて、「ここに『○○オークション』と書いて、じゃんけんオークションにかけるものを入れよう!」と呼び掛けました。
教室の壁から剝がされた掲示物は、ゲストティーチャーの写真、運動会でのソーラン節の写真、ソーラン節を大成功させるために話し合った板書の写真から、4月から重ねて掲示してきた給食の献立表、学校だより、学年だより、学級だよりまで。その他に、自動車部品工場の社会科見学のときに「学級に飾って」といただいてきた鋳物の人形や、5分間を知らせる音楽のCDもオークション用の箱に収められていきます。
ちなみに私は、タイマーなどで「あと5分ね!」とやりません。5分で終わる音楽を探してCDをつくっています。タイマーの場合、子どもたちは目で見て残り時間を確認しますが、音楽の場合、慣れると曲の流れで「もうすぐ時間になる!」ことがわかるからです。
さて、今年度は子どもたちが「年度末オークション」という名前に付けましたが、私は毎年、学級の子どもたちが「思い出の品物」と考えるものを全員で分けることにしています。次年度、私が新しい学級を担任するときにそれが残っていると、前年度の姿を探す子どもが出てしまうからです。前年度を懐かしむ……というより、前年度の思い出を探しにくる子どもの姿は見ていられません。新しい年度になったら、新しい友だちと新しい先生で、新しいものをつくり始めるべきです。
同じタイミングで私も教室内の荷物を片付け始めます。片付けられていき、4月当初のような教室になることを子どもたち一人ひとりが自分の目で見て、認識することも大切だと考えています。
そして最終日には、「次の学級で、今年身につけた力を発揮してさらに輝いてね!」と元気に笑顔で送り出します。
つづく
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東京都八王子市立由井第三小学校
主任教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。