東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、この秋は、より一層安全を考えながらねらいを十分に達成するために、どのようにすればよいのか、皆さん悩まれていることでしょう。
今回は、これから実施すると思われる単元であり、特に課題が多い、町たんけん等の「内容(3)地域と生活」の単元を中心に、単元計画を作成する手順に沿って、現在考えられる活動や体験・人との交流における具体的な方法についてお伝えしたいと思います。それぞれの地域の状況や、今後の様子によってはこの限りではありません。もちろん通常通り行えることが一番ですが、場合により参考にしていただけたらと思います。
単元の入れ替えを検討する
昨年度同様、今年度の学習活動においては、これまで生活科の授業づくりの中で大切にしてきた、友だち・地域の人・ゲストティーチャーなどの「人との関わり」を通して考えを広げたり、深めたりする場面を設定することが難しい状況です。
また、地域の状況によっては、様々なところへ訪問することや校外の活動について制限もあると思います。今後の状況について、まだまだ見通しがもてませんが、少しでもよい状況の時期に行えることを期待して、単元の入れ替えをすることもよいでしょう。
例えば、2年生で(3)地域と生活、(4)公共物や公共施設の利用の単元を例年9月始めに実施していた学校は、先に内容(6)自然や物を使った遊びや、(7)動植物の飼育栽培(生き物の単元)などを行って、少しでも状況が改善してきたところで内容(3)や内容(4)を実施するということも考えられます。
年間指導計画の変更が難しい場合の工夫
この先は、年間指導計画の変更が難しい場合や制限がある中で実施する場合の工夫について考えていきたいと思います。
前回、内容(3)と内容(4)を組み合わせて行う単元について、公共施設を重点的に行うということお伝えしました。学校の外へ出て、公共施設へも訪問が可能な場合は、地域の施設の中でも公共施設に重点を置いて行うこともできます。
学習指導要領を確認する
どの単元においても(コロナにかかわらず)、『小学校学習指導要領解説 生活編』の内容に示されたことを確認することから始めます。今回は、内容(3)地域と生活について考えます。
(3)地域に関わる活動を通して,地域の場所やそこで生活したり働いたりしている人々について考えることができ,自分たちの生活は様々な人や場所と関わっていることが分かり,それらに親しみや愛着をもち,適切に接したり安全に生活したりしようとする。
単元の目標を自分の言葉に置き換える
次に内容を単元の目標に置き換えます。さらに、自分の言葉に置き換えて頭に入れておくとよいでしょう。この単元では、自分たちの学校の周り、家の周りなど自分たちの身近な地域を学習材とします。私は、次のように考えました。
自分たちにとって身近な地域を散策することで、初めの段階には、どのような場所やどのような物があるのかについて考える。そして、気付いたことを交流することから新たな思いや願いをもち、繰り返し関わる。次の段階では、自分たちの生活を支えている人々に目を向けて考え、地域のよさや素晴らしさ、自分たちの生活は地域の様々な人や物などに支えられていることに気付き、適切に関わることができ、これからも関わっていこうとしたり、自分たちの地域を大切にしようとしたりすることができるようにする。
活動例:校外での活動が難しいときは…
そして、次に実際の活動を考えます。
授業として校外へ出ることが可能であれば、散策のみでも行いたいところです。訪問は難しくても散策は可能という場合もあると思います。しかし、どうしても校外へ出ることができないようであれば、子どもたちがそれぞれ知っている自分の家の周りや学校の周りのおすすめの場所について紹介し合うことから始めます。
おすすめの場所を考え始めることで「よくわからないな」というつぶやきが生まれ、「よく見て見よう」という流れになり、それぞれの家の周りをよく見てくることを宿題として取り組みます。そして、それぞれ見付けたことをふせんやカードなどにかいて交流し、次の思いや願いにつなげることができます。
分散登校の場合は、模造紙などにふせんを貼って、それぞれ見ることができるようにすることも交流としては有効です。「いいね」と思ったら名前シールを貼ります。場合によっては、タブレットパソコンでそれぞれにかいた物を共有できるようにすることも有効です。低学年の子どもたちには文字入力がなく、指やタッチペンなどでかけるものがおすすめです。
可能であれば、写真も交えてつくれるとよりよいと思います。その場合は、写真撮影をする際には、許可を取らなければならないということも指導が必要になってきます。
第1次のポイントは、自分たちの周りにどのようなところや物があるのか(場所や物)について広げます。そして、友だちの見付けたことを見たり聞いたりすることを通して、もっと知りたいと思ったことについて調べていく活動(第2次)へと進んでいきます。
活動例:児童がもっと知りたいと思う場所を訪問できないときは…
第2次では例年、それぞれもっと知りたいと思うところへ訪問し、質問をしたり、見学や体験をさせてもらったりしていたと思います。もちろん可能であれば実施したいところです。しかし、実際に子どもたちが訪問することが不可能という場合は、子どもたちが手紙を書いて、教師や保護者や地域のボランティア(スクールサポートなど)が子どもたちの代わりに訪問して撮影し、動画などで答えてもらうという方法が考えられます。動画も難しいようであれば、写真を撮らせてもらい、答えと共に見せることも考えられます。学校や自治体等のICT機器の状況に合わせて活用できるとよいでしょう。
地域の人たちの素敵なところについて考え、その人たちが自分を含めた地域の人たちのことを思っていたり、支えていたりするのだということに気付くことができると、地域への親しみや愛着をもつことができるようになると思います。
自分たちの地域について考え、よさを知り、大切にしようとすることは、3年生以降の総合的な学習の時間などで、地域の問題に目を向けて、課題を設定して解決しようとすることへとつながる重要な単元であり、可能な方法で地域の人との交流を図り、ねらいを十分に達成させたい重要な単元です。
現段階で制限がある場合であっても大切にしたいことと、困難な状況の中でもできる可能性のある方法を考えました。学校によっては、例年に近い形で実施できる学校もあるかと思います。その場合はぜひ、例年の成果を生かしつつ取り組んでいきましょう。
今後も、どのような状況の中であっても、未来を切り拓き、たくましく生きていくことができる子どもたちを育てていくために、私たちも教師も、安全を最優先に考えて、状況を見ながら前向きにできること、工夫しながら行うことができるよう考えていきたいと思います。
つづく
プロフィール
東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
なぜ、小学校の先生に?
小学校の卒業文集に「幼稚園の先生になりたい」と書いたと思います。幼稚園教諭として10年間勤務した後、「幅広く子どもたちと関わることができる人になりたい!」と思い、現在の道に至りました。
my belief
「笑う門には福来る」
「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。