東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
令和3年度が始まって1か月が経ちました。今年度も新型コロナウイルスの拡大防止対策をして、日々試行錯誤しながら実践を重ねていらっしゃると思います。そこで今回は、コロナ禍における生活を楽しく豊かにするための工夫、1年生の学校探検の単元づくりの考え方についてお伝えします。
学校探検は、ほとんどの場合、4月に入学した子どもたちが初めて取り組む生活科の単元ではないでしょうか。スタートカリキュラムや生活科の学習で大切な考えですが、キーワードとして「就学前の経験を生かす」「活動の内容や方向を自分たちで決める」「子どもたちが思いや願いをもち、それを実現していく活動になるようにする」ということがあげられます。乳幼児の経験や自分たちの知っていることを生かして活動に取り組むようになることが、子どもたちの不安な気持ちを取り除き、ドキドキやワクワクといったプラスの気持ちに変わり、意欲的に活動し、自信をもつことができようになります。そして、生活科の学習は「自分たちで決めるのだ」ということに気付くことができるようにしていきます。
1. 学習指導要領を確認する
まずは、小学校学習指導要領解説生活編で内容(1)について確認します。
(1) 学校生活に関わる活動を通して,学校の施設の様子や学校生活を支えている人々や友達,通学路の様子やその安全を守っている人々などについて考えることができ,学校での生活は様々な人や施設と関わっていることが分かり,楽しく安心して遊びや生活をしたり,安全な登下校をしたりしようとする。
2. 自分の言葉でイメージする
次に、上記の内容を具体に置き換えます。簡単な言葉でもよいので教師が自分の言葉でイメージします。
例:
「がっこうたんけん・つうがくろたんけん」をして、〇〇小学校や通学路の「いいね」を探し、見つけた「いいね」を友だちと伝え合ったり、学校や通学路について考えたりする活動を繰り返すことで、学校は楽しく安全に過ごすことができるような物や場所がたくさんあること、自分たちが楽しく安全に過ごすことができるようにするために支えてくれる人がたくさんいることに気付き、「学校は楽しいところだ」「もっと〇〇したい」「自分たちで考えてできるよ」などという意欲や自信をもって、遊んだり生活したりすることができるようにする。
単元の目標とも重なりますが、ここを自分の言葉でイメージして頭に入れておくことが大切です。
具体的にイメージしておくと、活動している子どもたちの姿の中から、評価につながる声かけ、支援すべきこと、取り上げる姿などが単元を通して一貫します。規準を明確にもちながら一貫した指導や支援をしていくことが、子どもたち一人ひとりが自分なりの概念を形成することにつながると思います(本単元では、「私の学校と通学路」が自分たちの生活にどのように関わっているのか)。
3. どのような資質・能力を育てたいのかを明確にしてスタートする
このように、なぜその単元に取り組むのか、子どもたちがどのように生活するようになってほしいのか、つまりどのような資質・能力を育てたいと取り組むのかを明確にもってスタートします。評価規準を子どもの姿でイメージしておくとよいでしょう。
4. 一次、二次、三次と次を意識して、学びが深まるよう展開する
入学して1週目の子どもたちは、「学校ってどんなところかな」とワクワクしていると思います。たとえば子どもたちの「向こうには何があるのかな?」という言葉から推察できるように、通っているところであっても、一人では見つけていないものがたくさんあったりすると思います。
第1次では、みんなで同じところへ探検して、みんなで発見したことを交流します。学校によっては、2年生など他学年が1次で案内してくれるところもあるかと思います。
何か所か探検するうちに、今度は、「自分たちで行ってみたい」「行っていないところへ行ってみたい」となってくると思います。そこから第2次のグループでの探検へとつながっていきます。
2次からは持ち物や約束も、みんなで考えを出し合って自分たちで決めます。教師がすべて用意しておくのではなく、子どもたちが「書くものを持っていきたい」「地図がほしい」「探検バッグを持って行こう」などと、自分たちで考えることでより意欲的に活動するようになります。
また、「お兄さんお姉さんは勉強しているから静かに行こう」「廊下はゆっくり歩くよ」など、自分たちで約束も考えることで、ルールやマナーを守ろうという意識をもつようになります。もちろん第2次で行きたいところや回る順番なども自分たちで決めます。
そして、発見したことを交流し、第3次で「今度はくわしく聞きたい」となったり、「やってみたい」となったりします。そして、なかよくなるための行動へとつなげます。
単元の進度に合わせて環境構成を工夫することも支援として有効です。学校や先生、学校探検に関する本を展示したり、自分たちの生活を支えている人や場所などの写真や活動の様子の写真を掲示したりします。単元のはじめは、学校探検という活動やもの、場所へ興味・関心をもつことができるもの、後半は、人などに興味・関心をもつことができるよう変えていきます。そのようにすることで子どもたちが思いをもって活動に取り組むことができるようになったり、比べる・試行錯誤するなどしたり、考えを広げる・深めるなどしたりすることができるようになります。
5. 子どもたちが自分の生活を楽しく、豊かにしていくことができるようにする
生活科は、子どもたちが自分の生活を楽しく豊かにしていく、そのような教科です。そのため、単元のはじめと終わりだけではなく、途中においても、子どもたちの生活とつなげることを意識します。例えば、自分たちの生活を支えてくれる先生がわかり、「〇〇先生に朝会って挨拶したよ」と進んで関わるようになったり、「ケガをして困った時には、自分で保健室へいけるよ」となったりしていくなど、少しずつ子どもたちが自分の生活を楽しく豊かなものにしていくようにするのです。
学校と自分の生活を題材とした本単元は、これから6年間過ごす学校がどのようなところかということ、学校での学習はどのようなものかというところをつくる重要な単元であると考えます。また、1年生の生活科や様々な学習は「学校探検」または「学校」を柱として取り組むことも考えられます。
今回の学習指導要領の要として、社会に開かれた教育過程があげられています。
学校・子どもたちも身近な社会と連携して、よりよい未来・社会をつくっていくようにすることが求められています。よりよい未来・社会を創っていく子どもたちを育てるためには、身近な生活の中に大切なものがたくさんあることに気付いてほしいと思います。
その第一歩である学校が子どもたちにとって、自分たちの生活を支えてくれるすてきなところなのだと気付くことができるようにすることが、これからの生活科や総合的な学習の時間などで地域や身近な社会へと思いを広げることにつながるのではないかと考えています。
今年度も子どもたちと楽しみながら本単元に取り組んでいきます。
学校探検の単元づくりの流れ
- 学習指導要領を確認する
- 自分の言葉でイメージする
- どのような資質・能力を育てたいのかを明確にしてスタートする
- 一次、二次、三次と次を意識して、学びが深まるよう展開する
- 子どもたちが自分の生活を楽しく、豊かにしていくことができるようにする
つづく
プロフィール
東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
なぜ、小学校の先生に?
小学校の卒業文集に「幼稚園の先生になりたい」と書いたと思います。幼稚園教諭として10年間勤務した後、「幅広く子どもたちと関わることができる人になりたい!」と思い、現在の道に至りました。
my belief
「笑う門には福来る」
「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。