東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
新学習指導要領の全面実施とともに、新型コロナウィルス感染症の対応にも追われた令和2年度ももうすぐ終わりになります。
平成元年からスタートした生活科ですが、昭和から検討され、平成で始まりました。そして令和ではこれからの時代を生きる子どもたちに身に付けさせたい力を育む学習の中核となる教科として充実させていくことが求められています。
今回は、「生活科とはどのような教科なのか」について当然のことではありますが、改めて考えたいと思います。
まず初めに、生活科は教科です。教科であるため、学習すべき内容が(1)学校と生活から(9)自分の成長までと決まっています。2年間を通して漏れがないようにします。年間計画を見渡して、学校の実態や児童の実態からどの時期にどのように取り組むのかを考えます。
次に、教科を関連させて指導すると有効だと考えられるところを探して、各教科とつなぎます。
その後、改めてそれぞれの内容に関する児童の実態と、地域を含めた児童の身近な生活の実態を踏まえ、どの内容にどのように取り組むのか、生活科の学習を通して「どのように生活する子になってほしいのか」を考えます。
併せて学習対象を具体的に決めます。どこで(または、何で)どのように学習していくのかについてです。子どもたちが自分の生活に生かすことができるようにする、つまり、生活科で学習した子どもたちが、自分で生活の中にその内容に関する自分なりの概念を取り入れて生活するようになるためには、自分の生活の身近なところを学習対象とすること、学校や地域の実態に合わせることが大切です。「身近である」ことがポイントです。距離や実態と離れているところが対象となると子どもたちは、自分で生活に生かすことができなくなるからです。
しかし、生活科の主役は子どもたちです。自分で自分の生活を楽しく豊かにするためには、生活科の学習においても活動の内容や方向は、自分、あるいは自分たちで決めるようにします。
そして、単元がスタートしてからは教師はこのような子どもたちになってほしいと考えてたてた計画をもとにして支援をしていきます。生活科の場合は、直接的な指導よりも子どもたちが思いや願いを実現していくことを支える支援が中心となると思います。
環境構成を工夫することも大変有効な支援です。子どもたちが思いをもって活動に取り組むことができるようにする、対象に繰り返し関わって比べたり、試行錯誤したり、考えを広げる・深めるなどしたりすることができるようにする、そして活動を通して発見したことをもとにして、子どもたち一人ひとりが対象に対する自分なりの概念を形成することができるようにするのです。
生活科は、子どもたちが自分の生活を自分たちで彩り楽しく豊かにしていく、そのような教科だと思います。そのため、単元のはじめと終わりだけではなく、途中においても、子どもたちの生活とつなげることを意識します。少しずつ子どもたちが自分の生活を彩り、楽しく豊かなものにしていくようにするのです。
また、今回の学習指導要領では、社会に開かれた教育過程が要となっています。学校・子どもたちも身近な社会と連携して、より良い未来・社会をつくっていくようにすることが求められています。より良い未来・社会をつくっていく子どもたちを育てるためには、総合的な学習の時間になって突然身近なところから問題を見付けて課題を設定するのではなく、生活科の段階から身近な社会や自然、人に目を向けることが大切です。生活科を経験した子どもたち、身近な生活の中、つまり身近な社会や自然、人々が大切な存在となった子どもたち、そしてそれらを取り入れて生活している子どもたちこそ、社会の問題に目を向けることができるのだと思います。
自分の生活を彩り、楽しく豊かに生活していく子どもたちを、よりよい未来・社会をつくるため、身近な社会、自然、人々の良さに気付き、大切にしながら生活する子どもたちを、私たちは生活科を通して育てていきたいと思います。
プロフィール
東京都大田区立久原小学校
指導教諭 小笠原さちえ
なぜ、小学校の先生に?
小学校の卒業文集に「幼稚園の先生になりたい」と書いたと思います。幼稚園教諭として10年間勤務した後、「幅広く子どもたちと関わることができる人になりたい!」と思い、現在の道に至りました。
my belief
「笑う門には福来る」
「笑顔がいっぱいの教室にも福がたくさん訪れる!」と信じています。