東京都八王子市立由井第三小学校
主任教諭 八木美香
班の中での友だちづくりは、豊かに対話できる子どもの育成につながることの一つであると考えます。コロナ対策の中では「班で……」という響きにも慎重になる毎日ですが、丁寧に行うことで、安全に活動できます。また、安全に仲間と活動できている自分を自覚することで安心した毎日になり、友だちと自然な対話が生まれ始め、学習活動の中でも日常生活の中でも有効な「対話による思考の活性化」につながると考えます。
今年度は6年生の子どもたちと毎日を過ごしてきましたが、2学期もそろそろ終盤です。そこで今回は、私の学級での「班」について紹介します。
班を新しく編成する日は、子どもたちは、前の日からワクワクドキドキ。「これまでお世話になりました」と大きなふせんに小さな文字で、これまでのお礼のお手紙を書いて交換しています。自分から班の一人ひとりに向けて書きます。「〇〇の話し合いのときの意見がスゴイと思ったよ。大活躍だったね」「ものをなくしたときに探してくれてうれしかったよ」など、子どもたちの記述を見るとその班で起きたエピソードがわかります。交換したふせんを紙に貼り付け、大事そうに読んでいる姿が見られ、班の最終日はとてもあたたかい雰囲気になります。
新しい班は、毎回くじ引きで決めています。年度当初の班編成のときに、「大人になって隣の家に住む人を選べるわけではない。会社で隣の席になる人を選べるわけではない。だれが同じ班になっても仲良くできる人になろう」ということを担任の思いとして伝えました。
一度に全員でひくことで「一番にひいた」「あまりくじをひくことになった」がありません。しかし、コロナ対応が最重要となる現在は、ほんの一瞬で集まって、一瞬でひきます。「マスクの中の口を閉じて大急ぎで集合! 5秒以内だよ! 5、4、3、2、そーれ!」と、一斉にくじをひきます。
くじで決まったメンバーとの初顔合わせは、第一印象が大切です。笑顔であいさつ! 喜びすぎても、無表情でも、好印象にならず! 互いに小さく気をつかい合うことの大切さを学びます。
班での活動
健康観察カード(コロナ対策)、家庭学習ノートなどの朝の提出物は、班の箱に互いに確認し合いながら入れます。
学習後にプリントや作品を提出、保管するときにも班の箱、班のクリアケース、班の保管用ビニール袋に入れます。
班で集めることで、指示がなくとも互いの作品、進捗状況などの情報交換が生まれます。自然と対話が生まれています。
教室移動は、班の列で。短い列では、全員の意識が行き届きます。「仲間が休み時間から戻ってくることの確認も素早くできる」「まっすぐ並んで静かに移動できていることを自覚できる」など、学校生活のルールを守っている自分を自覚できるだけでなく、その場で仲間と一緒に「〇班、OK!」と褒めてもらえて自信にもつながります。
11月の学習発表会に向けて、劇づくりに取り組んだ経験がある子どもたちは、様々な活動で劇づくりを行って楽しく学習のまとめをしています。例えば、社会科の学習活動で、江戸時代の人々の思いを予想する活動を踏まえての劇づくりでは……
・将軍謁見の場を待つ大名どうしの会話
・朝から晩までよく働く町の人たちの町角での会話
・朝から晩までよく働く農家の人たちの会話(突然、大名行列に遭遇?!)
など、班での活動では豊かなアイデアが生み出され、学習内容のまとめの活動がまるで『おたのしみ会』の雰囲気になりました。
体育でも、チームによるゲームが盛り上がります。現在12月は、アルティメットに取り組んでいますが、ディスクを扱うのは初めてという子どもたちは、作戦を考えるほかに、自分のディスクを扱う技能を高める必要性を実感し、5時間目の体育の時間にそなえて、昼休みに集合し、班の練習時間を確保していた班がありました。学習カードには、ディスクを受け取る技能が高まったことや、班の友だちが成長したことを記述していました。
班の活動を安全に行うためのコツ
班の話し合いには、「ふせん」「ホワイトボード」を活用
話したことを確認するために、子どもどうしでもう一度「ねぇ、これって何だっけ?」と会話することがありますが、目の前にふせんやホワイトボードに記録が残っていると、それを読むことで、減らせる会話があります。
班の話し合いの終了は、「せーので『はい!』」の合図で
「せーの」で班のメンバーがタイミングを合わせて、「はい!」とそろって挙手します。その合図で担任は、「〇班、OK! 話し合い終了ね!」と受け取ります。「話し合いが終わった」と自覚させることで、そのあとにダラダラと話すことがなくなります。また、どこかの班から「せーので『はい!』」が聞こえたら、ほかの班の話し合いも残り1分以内に終了するという隠れルールがあります。ほかの班も「急いでまとめよう!」と巻きが入ります。
話し合いが終わったら、自分の時間
「せーので『はい!』」で班の話し合いが終わったことを伝えた後は、次々と静かな雰囲気になっていきます。ノートに向かって自分の考えを再構築する時間になり、次第に鉛筆の音だけに。そこで担任は、机間指導に入ります。机間を歩き、コロナ対策の一つである友だちとの距離を確認し、机の並び方を整えながら、一人ひとりのノートを見ていきます。
コロナ対応で話し合い活動が難しいと言われている昨今、「対話により学習を深める」ために、学級づくりの中での小集団づくりを着実に行うことがとても重要だと感じます。
つづく
東京都八王子市立由井第三小学校
主任教諭 八木 美香
なぜ、小学校の先生に?
元々はピアノの勉強をしていました。子どもたちと歌ったり、踊ったりすることが大好き。体を動かすことが大好き。お出かけすることが大好き。工作することも大好き。子ども一人ひとりの「楽しい♪」の表情が何より大好き。
my belief
「楽しい♪」の中に学びあり。