兵庫県たつの市立新宮小学校
主幹教諭 石堂裕
3年生の理科の学習では、昆虫の体のつくりについて学習します。1学期から、理科や総合的な学習の時間を使ってアゲハチョウ、モンシロチョウ、カブトムシ、そしてカイコなど複数の昆虫を飼育し、その生態について整理してきた子どもたちにとって、とても楽しみな学習です。
子どもたちは、これまでの学習経験から、すでに「頭、胸、腹に分かれること」、「あしが6本で胸から出ていること」、そして「羽が4枚あること」など、体のつくりに関係している知識は全員が理解しています。そこで、この単元では、個々の素朴な疑問から、昆虫の体のつくりに関する学びを深める学習にしようと考えました。学習展開のイメージは、「知識構成型ジグソー法」(東京大学 CoREF)を参考に、図1のような「協調学習collaborative learning」のモデルで示しています。実践の様子は次のとおりです。
8月末、一人の子が木についていたセミのぬけがらを四つ持って教室にやってきました。どうやら、「この前あしって木に登るためかな」という疑問が湧いたようです。友だちに聞いても納得できる答えではない様子でした。するとその子は、生活科で大切にしていた、「ひとりの気付きをみんなの気付きとして共有すること」を思い出しました。
そこで、理科の時間にモニターで大きく映し出し、みんなで「セミの前あしの役割って、木に登るためかな?穴をほるためかな?」といった問いを考えました。ここで大切なことは、写真2のように、クラス全員がどちらの立場なのかを明らかにしておくことです。そうすることで、より知的好奇心が高まっていきます。
さて、調べ活動で大切なことは、問いと関連する「手がかり」を探すことです(写真3)。子どもたちは、「答え」を見つけ出そうとしますが、事前準備がないと、「載っていない!」となり、せっかくの調べようとする意欲が低下してしまいます。そうならないためにも、「手がかりを見つけよう」と促し、事前に、あしの特徴や鎌やはさみのような役割、穴を掘る生き物などの前あしの特徴にも注目するとよいことなど、手がかりの候補を確認しておくことが大切です。
子どもたちが記述した「手がかりの候補」がある程度出そろったところで、そこから重要だと思うものを選択し、ふせんに書き出す活動を取り入れてみました(写真4)。私は、この情報選択するステップを重要視しています。その理由を次より解説していきます。
先で述べたように、ふせんへの書き出しが終わると次は、国語の「対話」の学習で学んだスキルを生かし、それらのふせんの整理です(写真5)。この他教科の学びを関連させる機会は、課題解決のプロセスとして欠かせません。
さらに、写真6のように、新たなメンバーでの対話の時間も取り入れました(知識構成型ジグソー法)。立っている子が、元のグループの考えを説明し、その説明に対して話し合いを進めるのです。
このような対話の時間を繰り返すことで、子どもたちはいっそう考えを深めました。その結果、セミの幼虫と成虫のあしの形の違いから、「前あしは穴を掘るためだ」と結論付けることができました。Withコロナでの授業づくりでは、対話的な授業は制限されます。ですがそれぞれの学校の状況に応じた工夫をして、より豊かな学びを提供できるようにしたいものです。この学習を通して、改めて手がかりをもとにした対話による学習は大切だと実感しました。
【参考文献】
「協調学習 授業デザインハンドブック 第2版―知識構成型ジグソー法を用いた授業づくり―」東京大学 CoREF、平成29年
つづく
プロフィール
兵庫県たつの市立新宮小学校
主幹教諭 石堂裕
なぜ、小学校の先生に?
身近な家族が教員だったため、小学生のころから「先生になる」と決めていました。小学校に決めたのは、教育実習での1年生との出会いです。授業の難しさを実感して、「もっと究めたい」と思ったことが、今も私自身を支えています。
my belief
「ピンチがチャンス!」
授業では、「ま(待つ)つ(つなげる)の(のせる)き(気付かせる)みと(認める)」