さとえ学園小学校 教諭 山中昭岳
□ バーチャルからリアルへの架け橋としてのiPadの活用
前号では、子どもたちが下の写真に隠れている生きものを探すなかで「“みる”技」の落とし穴にはまってしまい、そこから抜け出すために友だちや教師とやりとりする様子を紹介しました。
今回はその続きです。
前号で子どもたちが苦戦した課題です。この中に隠れている生きものは何でしょうか。ぜひみなさんもタブレット等でこの写真を拡大したり、移動させたりして探してみてください。
この中にいるのは、ある擬態をする生きものです。この段階で、子どもたちは「“みる”技」では、その生きものをみつけるのが難しいことに気付きました。さらに今まで自分たちが身に付けてきた別の技が重要だということにも気付きます。
子どもたちはこの一枚の写真で、諸感覚の大切さを認識することができたのです。この時、教師からの「今まで身に付けてきた技ってとっても大切なんだよ」という声掛けは、必要ありませんでした。
※「あじわう」の実践をはじめとして、アレルギー等に配慮し、安全面、衛生面に十分配慮して行っております。
では、写真を撮影した私はこの中の生きものを、子どもたちがこれまでに身に付けてきたどの技を使ってみつけたのでしょうか。
それは「“きく”技」でした。
ちなみに答えはナナフシです。写真の真ん中あたりをよく見てください。
これを聞いた子どもたちの気付きは、もう想像できることと思います。
子どもたちは、生きものを捕まえたい。そのためには、「“みる”技」だけではなく「“きく”技」が大切なことに気付きました。そしてその「“きく”技」には、おしゃべりは必要ないということにも気付きます。
子どもたちは、生きものを捕まえるために必要な「“きく”技」を十分発揮できるようにするために、自ら「静けさをつくるルール」をつくりました。これによって校外学習中に、教師から「静かにしなさい」という声掛けをする必要もなくなります。
校外学習においてもう一つ指導しなければいけないことがあります。次の写真を見てください。
さて、この中にも生きものたちがいます。どこにいるでしょうか。
※答えはこの記事の最後にあります。
この写真の中には、子どもたちが「捕まえたい生きもの」と「危険な生きもの」の両方が写っています。捕まえたい生きものの隣に危険な生きものが写っているのです。では、この写真を見た子どもたちは、どのような行動につなげていったでしょうか。
子どもたちは、捕りたい生きものをみつけた時にすぐに手を出すのではなく、周りの安全性を確認してから捕りに行くことを、自らでルール化したのでした。
余談になりますが、子どもたちの映像を読み解く目も鍛えられました。何度か写真の中の生き物探しをするうちに、中にいる生きものをぱっと見てすぐみつけてしまう子どもたちが出てきました。
それはなぜでしょう? 実は、この子どもたち、私の写真の撮り方の特徴を見抜いていたのです。つまり、私が被写体(生きもの)を中央に配置して撮るようにしている、ということをです! メディアリテラシー(メディアにはつくり手の意図が含まれること)も学びました。
このようにiPadを活用することで、たった一枚の写真を通じて、子どもたちが校外学習の決まりを自らつくる子どもたちへと変化することができます。これは、まさに主体的・対話的で自ら学びをつくっていく子どもたちです。今や、ICT活用の効果の有無を検証する段階ではありません。活用することが当たり前なのです。
また、この授業での教材づくりの時間はゼロです。これらの写真は校外学習の下見に行きながら撮ったものだからです。すなわち、ICTの活用は教材づくりにおいても時短になります。
デジタルネイティブの子どもたちにとってiPadのようなツールはもう当たり前の存在です。これをうまく利用しない手はないと思います。
答え:中央左にマムシ、右にカナヘビがいます。
つづく
プロフィール
さとえ学園小学校
教諭 山中昭岳
なぜ、小学校の先生に?
給食、遠足、修学旅行。楽しく、変化いっぱいの毎日が過ごせ、誰よりも一番近くで子どもたちの成長する姿をみることができるから。
my belief
教師自身が一番の学び手であれ!!