さとえ学園小学校 教諭 山中昭岳
□ バーチャルからリアルへの架け橋としてのiPadの活用
前回(“みる”技の落とし穴・概要編)、この写真で子どもたちは「“みる”技の落とし穴にはまってしまった」とお伝えしました。本号では、iPadを活用することで、自ら、校外学習のきまりをつくる子どもたちへと、変化する様子をお伝えします。
(1)「“みる”技」の落とし穴にはまる!
最初に【画像1】の写真を子どもたちに提示し、「この中には生きものがいるよ」と伝えます。次に、一人ひとりのiPadに同じ画像を提示した瞬間、子どもたちの中に静寂が……。私からの挑戦状でもあるこの一枚の写真、「“みる”技」をゲットしている子どもたちにとっては簡単なはず。みつけたくてしかたありません。しかし、どうしてもみつからないのです。だんだん今までの自信がなくなっていきます。
この実践は、iPadを【画像2】のように、一人1台使える環境の設定がポイントです。本実践においては、「“みる”技」の落とし穴に子どもたちが落ち込んでいくことが重要なのです。グループに1台では、自分が操作することなく、友だちの操作によって、探す場所が決められてしまう可能性があります。iPadの操作は、その子ども自身の思考と置き換えることができますので、誰かの操作によってではなく、自分自身の力でどっぷりと“生きものみつけ”にはまらなければなりません。
(2)自然と動き出す
さて、写真の中にいる生き物は,なかなか一人ではみつけることができないので、【画像3】のように、自然にあちこちと動き出します。iPadを手に、自分の画面をみせながら、相手の画面と見比べ、拡大したり移動したり、様々に思考をめぐらせます。その輪は、【画像4】のように、どんどんと広がっていきます。
(3)ギブアップ
前回、四つ葉のクローバーを探した時は、5分以内に全員がみつけられたのですが、今回は10分経ってもみつかりません。子どもたちは、くやしいと思いながらも先生に答えを尋ねます。
しかし、先生はとってもケチです。簡単には教えてくれません。
「どこにいるの?」
そんな聞き方では教えてくれません。
「ヒントちょうだい!」
そんな言葉づかいでは教えてくれません。
(4)インタビュー
実際に先生はどのようにしてこの生きものをみつけ、捕まえたのか?という質問に、私は、正しい言葉づかいで、しかもしっかりとしたインタビュー形式での質問にのみ、答えることにしました。
「先生は、“みる”技をつかってみつけたのですか。」
「お、いい質問のしかたになってきましたね。では、答えましょう。いいえ、違います。」
「え?!?」
みんなは、先生が、すごい“みる”技を使ってみつけたのだと思いこんでいました。
「先生は、別の技をつかってみつけたのですか。」
「はい、そうです。」
「あ、“におう”技だ!」
「あれあれ、何を勝手にお話しているのですか。正しく質問してください。」
「先生は、“におう”技をつかってみつけたのですか」
「どうして、そう思ったのですか。そのわけを付け加えて言ってみてください。」
「先生は“におう”技を使って、生きものをみつけたのだと思います。なぜなら、その生きものは、すごいにおいがする生きものだからです。」
「なるほど、いい答え方ですね。しかし、残念ながら違います。その生きものは、においはあまりしません。」
このやりとりの続きは、次回の記事で書きたいと思います。どんな技をつかって生きものをみつけることができたのか。そして、このやり取りから、子どもたち自ら校外学習のルールをつくっていく、という展開へと発展していくのですが……その過程を紹介します!
つづく
プロフィール
さとえ学園小学校
教諭 山中昭岳
なぜ、小学校の先生に?
給食、遠足、修学旅行。楽しく、変化いっぱいの毎日が過ごせ、誰よりも一番近くで子どもたちの成長する姿をみることができるから。
my belief
教師自身が一番の学び手であれ!!